うさんくさいパップス
「DJ赤坂のうさんくさいポップス」の想い出。
1990年代、日本のラジオはテレビとは一味違う個性や自由さが魅力でした。その中でも、深夜のラジオ番組「赤坂泰彦のミリオンナイツ」は、夜更けの筆者を魅了し続けた伝説的な番組として心に残っています。
とりわけ、この番組の中にでは特に異彩を放ったコーナーがありました。
それが「DJ赤坂のうさんくさいポップス」です。
「うさんくさいポップス」は、ラジオパーソナリティ/ディスクジョッキーの赤坂泰彦氏やそのスタッフがその足でレコード屋を巡りまくって選曲した「どこか怪しい雰囲気」を持つ楽曲を紹介するコーナーでした。
独自の目線もさることながら「うさんくさい」という表現自体がユニークで、リスナーに「それってどういう意味?」と思わせる魅力がありました。
Dj赤坂の軽妙なトークやツッコミと共に流れる、B級感やマイナー感漂う曲、または意図せず面白さが滲み出るような曲が取り上げられ、筆者は毎週「次はどんな曲が飛び出すのか」とワクワクして過ごしていました。
誰かに話す事もなく、毎週が楽しみでしかたなかったのです。
筆者の人生に最も影響を与え、筆者が音楽を選り好みしなくなったのは、間違いなく「DJ赤坂のうさんくさいパップス」のせいです。
我々リスナーやDj赤坂は、よりうさんくさくわざとらしい発音でパップスと呼ぶのです。
うさんくさいの意味
「うさんくさい」という言葉には、どこか不安を抱かせるような怪しさや不確かさ、そして少しの疑念が込められています。
日本語で「うさんくさい」と聞くと、多くの人は「何かが信じられない」「どこかおかしい」「裏がありそう」といった感覚を抱くのではないでしょうか?
この言葉の面白さというのは、物事や人が持つ微妙な違和感を指し示しているのにも関わらず、しばしば笑いを誘うような要素が含まれることもあります。
例えば、ビジネスの世界で急に利益を上げる新しい商品が登場したとき、その手法や裏の仕組みが不明瞭だと、誰かが「この商売、うさんくさいね」と口にすることがありますが、この場合の「うさんくさい」はその商売の成功が一時的なものであったり、裏で何かしら不正が行われているのではないか?という疑念を表しています。
また、「うさんくさい」は時に、物事を軽く皮肉るためのユーモアの一部として使われることもあります。例えば、流行の最先端に登場する新たなポップソングや、奇抜なファッションスタイルに対して、「うさんくさい」という言葉を使うことで、その新しさや独特さに対する不安と同時に、その無理にでも目立とうとする様子への軽いあざ笑いが込められることがあるのです。
筆者がこの「うさんくさい」と言う表現を面白く感じるのは、言葉自体があまりにも曖昧で多義的であるため、「うさんくさい」という表現そのものが、受け手によってその意味合いが微妙に異なるところです。
ある人にとっては、これがただの不安や不信の表れである一方、別の人にとっては「これこそが面白いもの」「予測不可能な魅力的なもの」と受け取られることもあります。要するに、どんなものに対しても「うさんくさい」と感じる感覚は、ある種の直感や個人的な判断に依存していると言えるでしょう。
この言葉の持つ曖昧さは、私たちが何かに対して直感的に抱く不安や、何かが不確かであると感じる瞬間にぴったりです。「うさんくさい」と感じるその瞬間に、自分がどんな疑念を抱いているのか、また何を本能的に疑っているのかを考えてみることも面白いかもしれません。
さて、実際にうさんくさいパップスに触れてみてください。
謎の女B
うさんくさいパップスでも大人気で何度も取り上げられた平岡精二さんの「謎の女B」のエゴラッピンのカバーです。
状況説明を歌うだけのうさんくさい歌謡曲です。たまりませんね。
「お前は何がしてぇんだよ!」と、思わずつっこまずにはいられないにも拘わらず、ミステリアスだけれども情緒のある音楽に仕上がっているからもう、うさんくさいとしか言いようがない。
エゴラッピンがカバーすると、ああ、なるほど、オシャレだなぁと思いますね。
キノコホテルの方もオススメです。
ハイティーン・ゴーゴー
うさんくさいパップスでもかなり反響のあった森本和子さんのハイティーン・ゴーゴーです。
森本和子さんの歌唱力の高さや声質の良さはさておき、シャーク関でお馴染みの口ギターをいち早く取り入れたうっさんくさい歌謡曲ですね。たまりません。
ゴー!ゴーゥオオオオオ!とテケテケテケテケテケのせいで全てがどうでもよくなるしそれまで何を言ってたのかさっぱり入って来ません(笑)
ドッキングダンス
うさんくさいパップスと言えばサトー・ノトのドッキングダンスと言っても過言ではないです。
恰好良いかダサイかって言うよりもうさんくさい。
i love you baby need you so kiss me hold your hand dont you know
赤坂氏も放送時に言っていたけど、やっすい良く聞く流れの英語のやつ!たまりません。
何が面白いのか
1990年代は、J-POPや洋楽が多様化し、サブカルチャーが広がりを見せた時代です。「うさんくさいポップス」のような一風変わったコーナーは、リスナーにとって新鮮で、自分の好みを再発見する場でもありました。
現代では動画サイトを探せばいくらでも変わった曲、面白い曲、古い曲、最新の曲などが大量にありますが、当時はインターネットがなく、ラジオやテレビ、雑誌での情報源しかありませんでした。しかし、ラジオにせよテレビにせよ「うっかり触れてしまった」などの、偶発的な事で知る事でしか確認できなかったのです。
そんな折に筆者がうっかり聞いてしまった「うさんくさいポップス」では、赤坂泰彦氏の軽妙な語り口と音楽への深い愛情、リスナーを喜ばせたいという強い思いが、コーナーを単なる「ネタ枠」ではなく、音楽への新たな視点を提供する知的でユーモラスなコンテンツに昇華させていました。
だからこそ、筆者はより鮮明に何十年も覚えているのかもしれません。
1つ間違えばバカにするような言葉も多かったけど、そこはそれ。
それで思い出したけど「ザリガニボイス」と呼ばれた「太陽に抱かれたい」も名曲です。
CKBはだいたいうさんくさい
Dj赤坂のうさんくさいパップスの時代から30年が過ぎ、2023年現在、TikTok発祥だったりYoutube発祥の音楽もたくさん生まれ、消えていく時代で、なかにはコミックソングも多くバズりまくってたりもしますが、うさんくさいというよりも、オシャレに特化している印象です。
うさんくささが足りない現代ですが、筆者が好きな横山剣氏率いるクレイジーケンバンドはだいたいうさんくさいです(笑)たまらんよ。
執筆後記
「うさんくさいポップス」は、コミックソングが多いと言えばそれまでではあるものの、いわゆる明るい雰囲気のコミックソングとは違って、演歌的な情念のこもった歌謡曲然としているのが面白いんですよね。
そもそも音楽とは…なんて言い出す人も多いかもしれません。しかし、音を楽しむと書くなんて誰でも言える言葉だけど、じゃあ音を楽しませることはできるか?と言うと、これはなかなか難しいです。