2stジャイロ の デフオイルの交換方法
動画内での筆者は、以下の工程に沿って作業を行っています。
作業の順番
- エンジンカバーを外す
- オイルパンを設置
- ボルトを抜いてオイルを注油
- シーリングワッシャーを交換してボルトを手締めする
- 最後にトルクレンチでボルトを締める
右上のトルクは15Nm、左下のトルクは20Nm - エンジンカバーを戻す
オイル交換の必要性について
ジャイロX・ジャイロキャノピー・ジャイロアップなど(参照:HONDAの三輪バイク - urakatahero”B”log)のジャイロ系やHONDAの2ST三輪車は古い乗り物なので、現在では中古での購入しかできません。
購入先は中古バイクや専門店よりも、個人経営の方やネットなどの個人売買などから購入する事が多いはずです。
すると、その多くは現状渡しでの納車になりますが、現状確認の際に見落としがちなのが【デフオイル(別称:ギアオイル/ミッションオイル/ファイナルリダクションオイル)】です。私の場合、自称専門店での購入でしたが、購入後にオイルを抜いてみるとほとんど入ってなく鉄粉まみれでした。早くに気付いて良かった。危なかったです。
鉄粉とはすなわち削れていった部品の残骸で、金属製品なので爪や髭と違って再生する事はないのです。物理的に干渉しあって動いているものですから、損壊は必ず起こるのですが、これを極力減らすため、それと、スムーズな潤滑を行わせるために必要なのがエンジンオイル(デフオイル)です。
『まともに動いているから交換しなくてもいいや』と思いがちですが、交換しなくてよいオイルなら最初から入ってません。重要な意味があるので、標準装備されているのです。
私がしつこい程【オイルを交換しろ~オイルを交換しろ~】と言い続けているのは、『壊れたら元に戻らないから』に他なりません。
今回の記事では、ジャイロXのオイル交換の必要性とオイル交換の方法を記載していきますが、結論は言わずもがな【オイル交換をしろ~】です。よろしくお願いします。
2サイクルのジャイロXにおけるオイルは2種類
HONDA社の2サイクルのジャイロに使用するオイルは、エンジンオイルとデフオイルの2種類です。どちらも重要なオイルですが、ガソリンタンクの横にあってキャップを外すだけで継ぎ足しが簡単なエンジンオイルと比べ、デフオイルは交換に工具が必要ですし、ボルトも使い捨てとなっています。そのため、めんどくささから放置されがちですが、しかし、この”デフオイルが担う役目”は、スムーズな走行性能とギアの保護です。ギアが破損してしまうと部品代そのものが高いのと、最悪の場合は予後不良です。
ですので、予め故障の予防をし、適切なオイル交換を行うことで長くジャイロX・ジャイロキャノピー・ジャイロアップを使用する事ができます。
ディファレンシャルギアオイル
ジャイロ系では、デフオイルやギアオイルなどと呼ばれるオイルです。
デフオイルとは、ディファレンシャルギア(デフ)と呼ばれる部品に注入されるオイルのことで、デフというのは、車両の左右の後輪の駆動力を調整する装置の事です。
駆動力の調整とは、例えば、左に曲がる際に右のタイヤと左のタイヤが同じ回転数ではうまく曲がれませんので、片方の回転数を下げる、あるいは、片方の回転数を上げるような機構で調整することによりスムーズな旋回が可能となっています。
2輪バイクを改造したトライクではこの部品が無い物が多いので、大回りになるなど旋回時の違和感が強く、最悪のケースでは転倒事故が起きてしまうとの事ですから注意が必要です。
デフオイルは、デフの摩擦や熱を減らしてスムーズな走行をサポートする役割を果たしています。
デフオイルがなくなると
デフオイルがなくなると、カーブなどで曲がりづらくなるばかりか、デフの摩耗や破損のリスクが高まります。デフオイルは歯車の潤滑の為のオイルです。
歯車というのは物理的にぶつかり合って回転しているのですが、オイル切れを起こすとその金属同士が激しくぶつかり続けて、最悪の場合は壊れます。
実際に、デフオイルを適切に使用していても金属粉がオイルに沈んでいることから、オイルがなければ更にダイレクトに金属がぶつかり合っていることがわかります。
また、デフから異音や異臭が発生する可能性もあります。
その場合の理由としては、デフの故障かオイル切れ、またはオイルのひどい劣化が考えられます。
問題なく動いていると思いきや、カーブ時に激しい振動などが起こっている場合は、デフ周りに異常が起こってる可能性もありますので、専門の整備士に見てもらう必要があります。
そうならないためにも、定期的に交換し、愛車を長持ちさせたいところです。
2ストジャイロはもう、現存するマシンしかないので本体・部品ともに価格の上昇が考えられます。それほどまでに価値のある乗り物ですから、是非、大切にしてください。
2サイクルのジャイロXのエンジンオイル
2サイクルエンジンは、ガソリンとエンジンオイルを混合させて走行するタイプのエンジンとなっており、2サイクルエンジン用のオイルの表記には、分離用・混合用・分離混合両用とありますが、最終的には混合されます。
それらは、エンジンの性能に適した比率の為に濃度が違うため、それぞれの役目に沿って使用する必要があります。分離用は専用タンクに注ぐ事で自動的に混合ができ、混合用は予めガソリンと混合させたものを使用するか、あるいは、混合比率を計算してガソリンに継ぎ足す必要があります。分離混合両用の場合は、どちらにも使えるという事です。
改造などを行っている方を除き、2サイクルのジャイロXのエンジンオイルは基本的に分離となっていますので、ガソリンの給油の際に残量を確認し、減って来たら継ぎ足しましょう。
詳細は別途記載しているこちらの記事を参照してください。
ちなみに、HONDA指定の純正オイルは”HONDA ULTRA SUPER FINE”ですので、ボアアップや改造(カスタム)をしていない場合はこちらがオススメです。
デフオイルの交換をします
当然ですが、デフオイルの交換は整備士に頼む事が絶対なのですが、ボアアップやミニカー登録などの改造により車両区分を理由に断られてしまうケースもあります。
いざというときに頼れるジャイロ系の専門店が近場にあれば良いのですが、遠い場合は自己責任でギアオイルを交換するのも一つの手段です。
オイル交換に必要な物
- オイル(デフ用に使用できる物に限る)
- オイラー(オイルの注入に必要)
- トルクレンチ(20Nm以下に対応する物)
- シーリングワッシャー(上下各1枚)
(90474-333-000)と(90441-425-000) - 角型ペットボトルまたはオイルパン
- 廃油処理箱
それぞれ下記に詳細を記していきます。
デフオイルについて
HONDA指定の純正ギアオイルはHONDA ULTRA G1で、必要量は0.33L(330ml)ですが、最終的にオーバーフローさせる為、約0.4L程度の注油をします。
純正以外のオイルを使用する場合は、JASO T 903 MA/SAE 10W 30/API SG SH SJ級相当またはそれよりも上級の物を使用してください。
主に【0W-30(4サイクル用)】【 5W-30(4サイクル用)】【10W-30(4サイクル用)】【10W-40(ミッションオイル)】【75W-90(ギアオイル)】などが使用できます。
『コスパより自己満』も、趣味の世界の大切な要素ですから、商品の能書きを頼りに購入して構いません。交換しない事が一番ダメなので。
私が使用しているのは、ワコーズのPro-S 30 プロステージS(0w-30)です。
実際のところ、何がどのように効果的に作用しているのかはよくわかりませんが、体感としてはデフオイルをウルトラG3に交換した時よりも、カーブの際や発進時のアクセルの挙動が軽くなった気がしています。
ちなみに、1L缶なので1本で2回交換できます。
オイラー(注油器)について
私はジェットオイラーに先端の曲がるストローをビニールテープで固定して使用しています。ジェットオイラーは握るとゴポゴポと注油できるのと、目盛りがついてるので簡単でオススメです。
ちなみに私が使用しているのはフルプラ製のスター印ジェットオイラー(400ml)で、DCMでの購入当時は300円程だったと記憶しています。
400ml程の油注しなら何でもよいと思いますよ。
要はオイル(油)が入ればいいので、マヨネーズのボトルでも出来る気がしています。
人気のオイラーはこちらです。
トルクレンチ
私が使用しているのは、MOTOTOOLの3/8プリセット型トルクレンチです。
トルクレンチは高価な工具ですが、この作業には最も重要な工具です。
というのも、締め付けが軽いからと締め続けるとエンジンケースが破損します*2ので、HONDA指定の圧力で締め付ける必要があります。
逆に言えば、指定のトルクにさえ気を付ける事ができるなら簡単な作業となります。
ようするにトルクレンチとは、ねじを締めるときに一定の力をかけることができる工具のことです。
ちなみにトルクとは、回転する物体にかかる力の大きさや方向を表す物理量(Nm:ニュートンメートル)の事です。
トルクレンチを使うと、ねじの締め付け力を正確に調整できますので、これにより、ねじが緩んだり、破損したりするのを防ぐことができます。また、ねじの種類や材質によって適切なトルクが異なります。
トルクレンチには、目盛りや音や動作でトルクを知らせる機能がありますが、精密な工具なので乱暴に扱うとメモリが狂いますので、使用後はかならず0にして専用のケースに保管しましょう。
私が使用しているのは以下のトルクレンチですが、胴体が太くてひっかかってしまいボルトに届かないので、別途、長いソケットかエクステンションバーが必要です。
MOTOTOOLの3/8プリセット型トルクレンチ
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2STジャイロのシーリングワッシャー
ドレンボルトとエンジンケースの間にかますアルミワッシャーで、オイル漏れを防ぐ役割を担うワッシャーです。
これは軽く潰すことで作用するため、使い捨てです。
上記の画像と同サイズなら市販品や他車種のもので代用もできますが、そこまで高い物ではないので純正部品の方が気持ちが良いですよ。
純正品はHONDAの個包装なのでなんだか恰好良いですし。
HONDA純正部品番号の(90474-333-000)と(90441-425-000)の二枚が必要です。
純正品以外で人気のワッシャーは、デイトナ(Daytona)のドレンワッシャーです。
現在の価格⇒M10(Amazon)/M8(Amazon)
オイルパン(受け皿)
ジャイロの場合は、角型の2Lのペットボトルの下側側面に穴をあける事でキャップ側を下にして抜いたオイルを眺める事ができます。
1回の廃油が0.4L程度なので500mlのペットボトルに移して複数本用意してから、廃油処理箱(2.5Lや4.5Lなど)を使用したほうがエコだろうと考えています。
廃油処理箱はホームセンターや通販などで300円程で購入できます。
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まとめ
- デフオイルが減っていると、カーブなどが曲がりづらくなる
- デフオイルが減っていると、デフが壊れる
- 交換に必要なものはオイル/オイラー/トルクレンチ/シーリングワッシャー/オイルパン/廃油処理箱
- 純正ギアオイルはHONDA ULTRA G1
- 0W-30・10W-30・10W-40・75W-90などのオイルを使用できる
- ジェットオイラーにストローを固定すると交換が楽
- ドレンボルトは適切な圧力で締め付ける必要があるのでトルクレンチが必要
- シーリングワッシャーは使い捨ての消耗品
デフオイルの交換で体感できる効果は人によると思いますが、私の場合は乗り心地が良くなる事を実感しています。
また、オイル交換を行うことで日常の使用での安心にもつながりますし、愛車を長持ちさせるためには絶対に必要ですので、定期的に行ってくださいね!
このページを保存(ブックマークなど)して見ながら行えば大丈夫です!
オイル交換に必要な物
交換用オイル⇒HONDA ULTRA G1
オイル処理箱⇒エーモン ポイパック
オイラー⇒フルプラジェットオイラー
オイルワッシャー⇒90474-333-000/90441-425-000
トルクレンチ⇒MOTOTOOL 3/8プリセット型トルクレンチ
エアークリーナーエレメントの交換もお忘れなく!
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